FakePlasticTree

ひびのいろいろ

自分はそんなにも正しい人間じゃない

聲の形(1) (少年マガジンコミックス)
大今 良時
講談社 ( 2013-11-15 )
ISBN: 9784063949735

10代前半の自分のこと、特に小学校高学年から中学生にかけての自分の記憶を時々消してしまいたい、懐かしいかれどあの頃のことをなかったことにしたい、そんな気持ちは自分だけでなく誰の心の中にでもあるんじゃないか。そんな思春期前半の辛い、痛々しい記憶が蘇ってくるような漫画。

確かこの作品の元になる読み切り作品を自分は読んだことのある。その虐めの描写などがあまりにも凄惨かつ残酷で、その漫画の公開が問題になった程の漫画。しかも登場人物が聾の女児。でも、これがこどもの世界の紛れもない現実でもあるんだろう。

そんな問題作の漫画の連載化。現在この「聾の形」という漫画は4巻まで出版されていて、その連載がマガジンで続いている。

第一巻は虐めの残酷な描写に溢れている。この巻だけで読み進めるのが辛くなってしまう人もいるかも知れない。しかし物語は2巻以降に展開を迎えるので、我慢して読み進めるのが良い。

あまりにも自分本位でその場の楽しみだけを追求してしまう主人公の男児の姿は小学校高学年の自分の頃の姿と重なる部分が多い。そしてその罪を成長と共に自覚し、背負ってゆく主人公。傷があまりにも深く常に死まで意識する主人公。しかし、周囲の子ども達もそれぞれの想いがあることが次第に明かとなってゆく。そういった細かい心の描写があふれ出る作品。これからもその展開が楽しみ。