FakePlasticTree

ひびのいろいろ

プリズン・サークル

自分が勤めている場所に通ってくれている保護者の方に「是非見てください!」と念押し(?)された映画。島根県の刑務所を舞台にしたドキュメンタリー。 この刑務所にはTC(回復共同体)を利用した治療プログラムが存在している。このプログラムを2年に渡って追ったのがこの作品。やっと休みを利用して約束を果たし、見ることができた。結果素晴らしく良かった。そして勉強になった。

TCの方法論などについては自分も詳しくは知らないのだけれど、詳しくは以下の書籍に書いてある。この映画に出演している藤岡氏は日本の犯罪臨床の第一人者で、自分も随分他の書籍などで勉強させていただいた。映画の中での藤岡氏の表情は素晴らしく温和で仏様のようだったことも付け加える。

治療共同体実践ガイド―トラウマティックな共同体から回復の共同体へ

治療共同体実践ガイド―トラウマティックな共同体から回復の共同体へ

  • 発売日: 2019/10/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

映画をみて分かるのは受刑者達が本当に自分の言葉で会話をしていることだ。輪になって受刑者達同士でだ。犯罪加害者達はおしなべて幼小児期から過酷な経験をしてきた人達がほとんど。そして陰性の感情を箱の中に押し込めて何も感情を感じないようにしてきた。このプログラムをすることでその体験をすべて乗り越えることができるわけではないのだろうけれどきっかけにはなるのだろう。

永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)

永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)

映画を見終わって連想したのは永山則夫の書籍だった。この物語と同じことが、TCの方法論をとりまく人々にもおこっているのだろう。犯罪加害者には罰ではなくて治療が必要であるということが本当によく表現された作品だった。こういう映画が地上派などで放映されるようになればよいなぁ。それが叶えばきっと良い世の中になるのになぁ。そしてそういう世界の先にトラウマを正しく見据えた トラウマインフォームドケア が根付いた社会ができるのだろうなぁ。