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ひびのいろいろ

【書評】聲の形

新刊が発売される度に楽しみにしていた作品(漫画)の1つがとうとう終結を迎えた。その名も「聲の形」。2014年は刻々といい、素晴らしい漫画が素晴らしい形で終結することが多かった年だった。

【書評】刻刻 - FakePlasticTree

「聲の形」は聾唖の女子高生「西宮硝子」を中心とする物語。

もうひとりの主人公の男子高校生「石田将也」は西宮硝子を小学校時代に虐めた経験をもつ。その後に将也はクラスから浮き、自分自信も虐められてしまう。こんな経験は誰しも小学生時代や中学時代に一度や二度あるだろう。過去の自分の惨めさ辛さに誰もが打ちひしがれているものだ。

そんな誰でもあるような人間の汚い部分をそのまま描いた作品。その汚い部分が実に汚く描かれている。第一巻はその部分が特に顕著でちょっと読んだだけでは嫌悪感だけしか残らない。しかし、巻を進めてゆくうちにその印象は徐々に変化してゆくことに気付くだろう。

登場人物の誰もが自分の中の汚い狡い部分に圧倒される。そして絶対的な孤独を感じ、死と常に隣り合わせの感情を持つ。実際に死を選び行動を起こすものもいる。

しかし最終的には惨めでカッコ悪くはありつつも何とか生きてゆく道をそれぞれが選んでゆく。その姿がなんともスガスガしくカッコ良い。

7巻で終結することは当初から決まっていたみたいで、中だるみのない内容の濃い漫画になっている。

最終刊の中(いやこの漫画全体かな?)で自分が個人的に好きな場面はここ。

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無声の瞬間がカメラのファインダーで描かれているコマがなんとも癒えず心地良い。セリフも何もないが感情が直に伝わってくる。

この作品はアニメ化もされるらしい。アニメでどこまでこの漫画の汚さ、人間の二面性や悲しさが描かれるのかが、興味のあるところ。

異色のマンガ 聲の形アニメ化(2014年11月19日(水)掲載) - Yahoo!ニュース