FakePlasticTree

ひびのいろいろ

【書評】母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った

タイトル名がとにかく強烈でそれだけで,この書籍を読むのを躊躇してしまう程。しかしタイトルと比較して内容は極めて常識的?。母を亡くした青年の物語。しかもこの青年は自身が悪性腫瘍で闘病していた経験ももつ。

 自分の母親の骨を食べるというのは確か昨年ぐらいに見たテレビのザ・ノンフィクションでもあった。泥棒である主人公が服役後,生き別れになった母親の消息をつきとめたものの母親はすでに他界。遺骨を引き取った主人公が母の遺骨を引き取り,その後骨を食べていた。その場面が随分と印象的であったのを覚えている。印象的というよりちょっと気持ち悪かった。

『ザ・ノンフィクション ~泥棒と刑事~』 - とれたてフジテレビ

だから未だにそんな行為について自分は理解できない。

母親というのは確かに特別な存在。それはだれでもそうだろう。特別であるからこそあえて話題にされるのはなんとなく避けたい気持ちになる。この書籍以外にも喪失の物語は他にも色々あって,母というより配偶者との送別を描いた作品を個人的には読んでいる。例を挙げれば以下の通り

悲しみにある者
ジョーン・ディディオン / 慶應義塾大学出版会 ( 2011-09-15 )

悲嘆反応は人それぞれで,周囲にいる人々はただそれに圧倒されてしまう。結局は側にいてあげることぐらいしかできることはない。月並みな言葉だけど時間が多くの場合は解決してくれる。

本作品は一緒に暮らしていた母を失いその息子である主人公の変化が自然な形で描かれている。過去の思い出と現在の出来事が交互にストーリーの中に出てきていて,実際の心の中の変化もこうやってすすんでゆくんだろうなあとそんな感じがする。

身近な人を亡くした子どもをどう支えるか? は以下のような書籍にも書かれてある。子どもの場合はより一層せつなくて胸が苦しくなる。喪失反応というのは,人間の普遍的なテーマなんだろうけれどやっぱり辛い。