【書評】鬼畜の家
「暗澹たる」とはこういうことかも知れない。事件の発覚時にはかなりマスコミを賑わせた児童虐待に関する3つの事件についてのノンフィクション。いずれの事件も被害者である子どもは死亡している。その保護者を成育歴から丁寧に取材した作品だ
事件発覚当時は大層マスコミで話題になった事件だ。自分の頭の中からはその記憶はすっかり抜けていた。マスコミも初めこそ大騒ぎ出会ったがその後の経過についてはよく知らなかった。そしてどのような生活背景でこのような事件が起こったかも知らなかった。もちろん詳細な犯人の成育歴も分からなかった。
この種のノンフィクションはそういったことを明らかにしてくれるという意味で意義深い。石井光太氏は震災後の遺体安置所を扱ったノンフィクションで名高く(確か映画化もされた)、その文章には誠実さと説得力がある。素晴らしいノンフィクション作家だと思う。
人間が人間としている限り悲しいけれどこの種の事件はなくなることはないだろう。とするならば制度(システム)で守ってゆくしかない。それを実感した書籍だった。 全ての大人が読む価値のある書籍だと僕は思う。