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ひびのいろいろ

【書評】お父さんがキモい理由を説明するね―父と娘がガチでトークしました

40歳代のお父さんが中学生の娘とファミレスで1つの話題について語りつくす。その内容をまとめたのがこの書籍。中学生の娘と話す時のルールは

「思考を整理して言語化すること」。そもそもの企画であるウェブ媒体で連載するということは、人様に読んでいただくことが大前提です。よって,家族や友人にしか通用しないあいまいな言い回し(別に,ふつー、いい感じに、なんとなく等)や,複数の意味に解釈できるフレーズ(やばい,かわいい,しょぼい,ダサい等),指示語は使わないと決めました (P197)

と決めて長い時は数時間ひとつの話題について話合ったのだそうだ。

語り尽くす内容は様々でタイトルにもある『父がキモい理由』から 恋愛,芸能界入り、英語と留学,生きる意味など幅広い。

本全体は3章で区切られていて1章は"父"と2章は"父と母"と,そして3章は"祖父"とそれぞれ娘が語り合う。

読み始めてまず感じるのは中学生の娘『サオリ(仮名)』さんの素直な自分の考えを表現する力。きっと頭が良く,本をたくさん読んでいるんだろう。そしてこの父親の傾聴する力、娘と対等に話し合う姿勢も中々できないところだろう。中学生の女子は父親に『ファミレスで話そう』といわれただけでキモイと感じるにちがいない。そればかりか二人っきりでファミレスに行くこと自体も抵抗がある年代だろう。しかもこのお父さんは娘の寝顔に毎日キスをしているのだそうだ。中学生の娘にそれはないよなあ。そんな絶対的に危うい状況の中でよくこれだけ話がまとまったものだと思う。

そしてこの本の真骨頂は第三章の祖父との対話の中にある。思春期年代の子どもが少しだけ離れた両親以外の年長者と話すことで,これだけ話が広がるのだと感動を覚えるような展開。

あいまいな言葉でごまかさず,人間が自分の言葉で具体的に考えや感情を表現することはやっぱり大事なんだなあということが改めて実感できた素晴らしい本だった。