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ひびのいろいろ

稀代の宗教家の対談集【書評】「この世に命を授かりもうして」

この題名と表示の穏やかな表情の著者をみて、人間離れした規律と知性をもった人なのだろうと僕は勝手に想像していた。

俗人とは遠く離れた人なんだろうと。しかし本書を読み終わってその想像はある意味当たっていてある意味外れていた。

きっとこの方は生まれついての宗教家で精錬潔癖な人物なんだろうと想像をしていた。しかし本書にも書かれているがその人生は実に波瀾万丈。激動の人生と言うに相応しいとはこのこと。

特別攻撃隊員として終戦を迎えた。

戦後はラーメン屋を開業するが火事で焼けてしまい、菓子屋、証券会社代理店など職を転々とするがいずれもうまくいかない。また、結婚2ヶ月目に妻が自殺するという事件もあった。

40歳を過ぎてから得度(仏教における僧侶となるための出家の儀式) を終えて「千日回峰行」という修行を計2回行った方だ。宗教の世界に入る年齢としてはちょっと遅いのかな、という気もするが

千日回峰行という修行も凄まじい。

  • 【マジ超人】1300年で2人!「大峯千日回峰行」が凄まじすぎる - NAVER まとめ
  • その他に「常行三昧」という修行も達成した方。

  • 酒井 雄哉大阿闍梨の言葉 -65  コラム『常行三昧』 - 忠さんの徒然草 - Yahoo!ブログ
  • 兎に角非常に常人離れした修行の経験をもつ凄い人。その方の対談集。対談の内容は難しい言葉で、偉い内容を話すというよりは優しい語り口調で特に目新しくものない普通のことを語ると言う感じ。しかし、人生経験の奥深さからその言葉の1つ1つはとてつもない説得力を有する。

    病気っていうのは物語なんだ。突然ぽっと出てくるんじゃなくて、からだのどこかにひそんでいる時代もあれば ちょっとジャブを打ってくる時代もある (P43)

    一度始めたことは必ずやり通せるようにするには?何を心がけたらいいのでしょうか?

    酒井:毎日、同じ時間に?同じことを?同じペースでやる?そういう習慣をつけてしまうことなんじゃないの  (P125)

    病気や怪我をしている人に向かって?ひっきりなしに「大丈夫?」「大丈夫?」って言う人、いるでしょう。あれは相手の立場になって考えていないわな。本当に苦しいときや痛みの激しいときには?そんなのにいちいち答えるのも億劫なものだと思うよ。あんなのも?心配しているつもりなのかもしれないけれども?実際は自分の感情にこだわっているんだよ (P158)

    などなど。稀代の傑人の1人なんだろう。

    人生の生き方として多いに参考になる本であった。