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ひびのいろいろ

【書評】ルポ中年童貞

中年童貞に関するルポルタージュ。あまり取り上げられることの少ない話題なのでkindleで発売されていたこともあって読んでいた。中年童貞には作者によると2つのタイプがあるという。

中年童貞には様々なタイプがいるが、大きくは低学歴、高学歴と分類ができるようだ。一人の作業である勉強だけはできるという中年童貞は多く、採用のハードルの低い労働集約型産業の末端に多く存在する低学歴の中年童貞とは明らかにタイプが異なる。 (P724)

この2つに分類される人の取材を中心として中年童貞の姿を描いたのが本書。特に興味が引かれたのは上記の分類でいうところの”低学歴”の中年童貞。高学歴の人にはまだ寄って立つところ,自尊心の源があるからよい。しかし低学歴の中年童貞の人々には何かを成し遂げたという経験のある人が少ない。自尊心が極端に低く,それを隠すように自分の殻の中に閉じこもってしまう人々。

そんな人々が福祉業界に流れ込んでいると作者は指摘する。

最初から諦めることが自然なので、その時代によって採用されやすい業種を転々としながら、受け身の流される人生を送っている。バブル以前だったら零細の工場、90年代は大量生産のための単純作業、00年代は非正規雇用の単純作業みたいな職業か。そして現在は、慢性的な人手不足の介護事業所が彼らの受け皿となっている (P1612)

このような人々の職場での振る舞いも思わず溜息が出てしまうような働きかただ。しかし懸命に仕事をしているという所はあるのかも知れない。基本的に生真面目なのだ。

そんな人々のための童貞を解決するプログラムまであるという。発端者はあの坂爪氏。以下の書籍が記憶に新しい。

そのプログラムも中々上手く機能しているとは言い難いらしい。何しろ本人のちょっとした勇気がないと中々活動は成功しない。そして自分が恥をかく体験,傷つく体験なしには恋愛や性活動なんかはとても行えたものではない。

自分が傷つくことで,そして自分を諦める(自分の弱さを認める)ことで得るものがある。

それを 実感 させてくれるのが 『童貞を捨てる』ということになるんだろう。