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ひびのいろいろ

風葬

小説を読む意義は?

実用書でなくて、文学小説を読む意義とは何だろう。文学小説は圧倒的に時間を浪費する。他の趣味に比較して時間対効果は圧倒的に低い。小説を読むよりも、同じストーリーを映画やアニメ、漫画ですましたほうがよっぽど時間を節約できる。しかし同じ物語であれば、できれば僕は小説を読みたい。そう思う。そして人生が忙しくて、やってられない、どうにも疲れた時にこそ読みたい。読んでその世界に浸りたい。そうやって読むことで心を癒やせる。

ちょっと疲れた時に読みたい作家は大抵決まっている。それは桜木紫乃の作品だ。 今までも何度も氏の作品は読んだ。混み合う電車の中でしんみりと涙を流してしまった作品もある。中年の男が電車の中で涙しながら本を読む姿というのはちょっと気持ち悪い。大抵において氏の作品は大号泣するタイプの作品はない。しんみりと心の中でじわじわと哀しみが染み渡る作品が多い。それがまた良い。そんな感情が自分の中にまだあったのかな、と知る感覚は何ともうれしい。そういう感覚を通り抜けると、心がリフレッシュされる。

氏の大傑作に値する作品は個人的には「ラブレス」と「星々たち」という北海道の哀しい女性を描いた作品だ。どちらも一気に読んだ。

そして今回の「風葬」だ。氏の作品にしては凡作といって良いのかもしれない。それでも充分に面白かった。やっぱり舞台は道東。北海道の不幸な人々たちが登場人物となる。内容はサスペンスドラマのような内容であった。火曜サスペンス劇場(まだあるのかな?)とかの格好の原作になりそうだ。

ストーリーはそんなに目新しいところはないが、文体がしっとりとしていてもの悲しく、道東の風景が目の前にぼんやりと浮かぶような感覚を味わえた。通勤電車の中で1-2日で読み終えることができた。帰りの「ぐたっ」といた自分の脳みそを癒やしてくれるようなそんな作品だった。

缶ビール

仕事の一通りの区切りがついたのは21時頃。こんな生活をしていたら体がもたないよなぁと呟きながら帰る。自転車で5kmほど職場から走る予定であったが、とてもそんな気力がわかず結局バスを使うことにした。夜の寒さがすっかりやる気を吹き飛ばした。今日も運動できなかった。バスを降りて最寄りの駅でスーパードライの500mlを購入する。サラミも一緒に買った。サラミをかじりながら1番線のホームでビールを流し込む。端から見たら寂しい中年男だが、この時間が一番心が休まる。1人で居酒屋に行くと金がかかるし、滞在する時間もちょっともったいない。

乗り込んだ電車は、ほどんどの客と反対方向なので空いている。端の席が6割型空いているのでかなりの空き具合だ。いつもの端の席に座った。今日の出来事を思い出しながら電車のここち良い揺れにウトウトしていたら知らぬ間に自宅近くの駅に到着した。あっという間だ。なんだか時間を少し損した気分になった。

自宅で家族はもう全員寝ている。しかし1階の電気を付けっぱなしにしてくれているのであまり寂しくはない。この家に誰かが居てくれる。それだけで心は落ち着くものだ。 家についたら2本目のビールを空けよう。そう心に決めていてので直ぐに冷蔵庫へと向かう。ビールをもってダイニングテーブルの端の席に座った時にiPhone7の着信が鳴った。iPhoneで電話を受けることなんて仕事場からの緊急の電話だけといって良いので妙な胸騒ぎがした。またか・・・と思った。

しかし予想に反して電話の主は大学時代の親友であった。そいつはかなり出来る奴だった。というか努力家だった。試験前には眠気と闘うために手の甲に鉛筆を指しながら勉強をしていた。そのため手の甲が真っ黒になっていた。2晩くらいの徹夜なんかどうってことのない奴だった。要領はよくなくて不注意だったけれど、優しくて不器用な奴だった。仕事を初めてからは数えるぐらいしか合っていないが、人生の節目では大事な話をしていたと思う。

要件は「国立大学の教授になるかもしれない」という話だった。まだ全然本決まりの話ではないが、そういうことだった。まず最初に俺に電話をしてきてくれたのが何よりも嬉しかった。同業界の中では必ずしも有利な立場にあるとは言えない大学出身者が国立大学の教授になるというのはかなりの出来事だ。思わず胸が高まった。親友の声が若干上ずっているのが分かった。そして早口であった。

これが10年前なら自分は相当悔しがっていただろう。20年前なら嫉妬で卒倒していたこもしれない。しかし今回は素直に友人の出世(するかもしれない話)を喜ぶことができた。自分がそんな気持ちになれたのがなんとも嬉しかった。この日のように電車のホームで缶ビールを俺が飲んでいる間にも、きっとあいつは歯を食いしばって論文を書いていたのだろう。凄いやつだ。

そして 俺は何をこれからするんだろう? と思うとちょっと切なくもなった。まあ、真面目にやろう。そう思いながら350mlの缶ビールを飲み干した

Apple Watch Series_3

初代Apple Watchはちょっと久しぶりに昔のAppleらしい製品だった。 端的に言うと『先進的だがイマイチ』というか『使い物にならない』

なによりも不満点はその遅さであった。画面は綺麗だがとにかく遅い。アプリケーションの起動などちょっと時計を投げつけたくなるレベル。数十年前のAppleの先進的PDA、『Newton』を思わず連想、いや『PiPPiN AtMaRK』か。まあ当然のごとく殆ど使わなくなっていった。

しかしSeries3になってその印象は大幅に変わった。

  1. 処理スピードが大幅に速くなった
  2. バッテリーが大幅に改善した

この二つが大きく印象をかえた。スピードとバッテリーのどちらも大幅にというところがポイント。これは約10年前のiPhone3⇒3Sの変化にも通じる。スピードで言うと、Apple Watchのアプリを使用する意欲が沸くようになった。そして1日普通に使用してもバッテリーがもつ!。一気に実用的な製品になった。

OSが進化したことによる利点も多い。iPhoneで音楽を聞いている時にはApple Watchの画面は自動的にMusicの画面になる。ワークアウトの時も同様。こんな細かい使い勝手が徐々に上がってくるところがなんとも快感。

ここ2年は左手はGARMINに占有されていた僕の左手であったが、これからはApple Watchになるだろうと思った。右手にはまだFitbitがついてはいるけれど

奈良へ

仕事で奈良に行った。 中学の修学旅行以来だから、20年ぶり。当時も確か東大寺に行ったのだと思う。その場所に行っても当時の記憶があり蘇ってくることは全くなかった。鹿に煎餅をあげたことくらいしか記憶にない。

合間に法隆寺に行ってきた。奈良から来るまで数十分という距離でなかなか行きづらい場所であった。そのせいもあって観光客がほとんどいない。何せ東大寺は「ここは中国か?」というほど中国語が飛び交い人でごった返していた。

静寂が心地よく、寺の鐘の音や歩く度に心地よく耳に響く砂利の音に癒された。法隆寺は一気にお気に入りの場所になった。

天気がもう少し良かったら最高だったのだけれど。

仲間と食べた食事も最高だった。

キングダム47

そろそろ発売しているかな、と思ってリアル書店を覗いてみたらやっぱりあった「キングダム」最新刊。もう読み始めたのは随分前のことになる。 連載当初から読んでいたわけではなくて、もうブームに火がついた後からだった。ちょっとブログで検索してみたらそれは4年前であった。

www.yoshitaka4729.com

まだ4年しかたっていないのか? とも思った。しかしずっと第一巻からテンションが一定の漫画というのも珍しい。中だるみというものが一切ない。次々と魅力的な人物も登場する。

本巻は「楊端和(ようたんわ)」と「王翦(おうせん)」の活躍が見所。特におう王翦の、不気味さはひたすらカッコ良い。

憂鬱 

あんまり政治的な話は得意ではない。そして意識的にそういう話は公開しないようにしてきた。しかし最近妙な胸騒ぎがしてたまらない。きっかけは東京都の都知事選からだった。なんとも薄っぺらく自己愛的な人物だなあと思った。そして自分の感覚とは随分と乖離してその人物が都知事となり、都議選も圧勝のうちに終わった。暗澹たる気分になったのを覚えている。

自身の感覚が世間一般とかけ離れているのだなと思った。しかしその後の経過を見る限り、自分の感覚がそれほど誤っていないことにも気が付いた。「この人には税金を使われたくない」と心底実感できた初めての人物だ。それはやはり、大義がなくエネルギーが自己に向いているからだろうと思う。

そんなそぶりを少しでも感じると、ちょっとどうにも止まらない嫌悪感が自分の中に生まれてきてしまう。仕事では気にならないが、私生活では別だ。許せない。

そして今回の衆議院選挙だ。そのどす黒い、利己的なエネルギーが充満している。ファシズムに行く流れとはこういうものなんだろう。感情で政治が動く。「なんとなく嫌い」「生理的に受け付けない」というエネルギーだけで意思が動く。

劇画ヒットラー (ちくま文庫)

劇画ヒットラー (ちくま文庫)

今回だけは(今までも行っていたけれど)選挙に行こう。自分の意思をはっきりと示そう。

仕事で一杯一杯の毎日だけれど、この流れだけは止めたいと考えた。

GLIM SPANKY

またちょっと日本で好きなバンドを見つけた。もう既に有名な人たちなんだろう。深夜、仕事が一段落し脱力してソファに体を埋めていた。こういう時は何も考えられず、というか考えたくなくてぼんやりしている。条件反射的にテレビのリモコンのスイッチを入れた。

褒めろよ

褒めろよ

  • GLIM SPANKY
  • ロック
  • ¥400

その時にこの人の歌声と遭遇した。ボンヤリとした頭は一気に覚めて何だか衝撃を受けた。心にそのまま入ってくる歌声。暴力的でありながら優しく繊細で心地よい。

男性ではこういった性質の声はいくつかある。「踊ろうマチルダ」だったり「竹原ピストル」だったり「エレファントカシマシ」だったりする。しかし女性では珍しい。T字路s は近いかも知れない。一般ウケする、聞きやすいという意味では軍配はこちらに上がる。

とにかくカッコイイ。日本語の歌詞もセンスが良い。ディストーションが程よく効いたギターも心地よい。日本の音楽は数十年前と比較して随分と良くなっている。そんなことを実感した人たちだった。