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ひびのいろいろ

アスペルガー症候群を描く映画「マイネーム・イズ・ハーン」

マイネーム・イズ・ハーン [DVD]
シャー・ルク・カーン, カージョル, ジェニファー・エコルス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン ( 2010-12-23 )

インド映画は大体その上映時間が長い。本作もその通例に漏れず軽く二時間を超過し三時間に手が届くような長さ。しかし長いからといって退屈で冗長な映画ではない。むしろ全く長さを感じさせない映画。

最も僕の場合は二時間以上の時間を作ることは中々できなかったのでiPad miniに持ち歩きながら細切れの時間でみたのだけど。

注目すべきは主演男優 シャー・ルク・カーンの演技

この映画はアスペルガー症候群を背景にもつ男性の生き様を描く物語。

「僕の名前はカーン(khan).テロリストではない」とひたすら念仏のように言葉を繰り返す主人公。

アスペルガー症候群について知識がなくてこの映画を見ればその特徴がほとんど理解できるのではないかと言えるぐらい、主人公を演じる役者の演技が素晴らしい。

絶えず小石を手に持つ仕草。音や色に対しての過敏性。パニックの様子。言葉の独特のイントネーション。会話の抑揚のなさ、不自然な歩き方や空間認知能力のつたなさ。会話の際の視線の写し方などなど、ほぼ教科書通りといっても良い。会話の間を読めず、場違いなことを言ってしまう1つ1つの出来事のどれをとっても本物の当事者に見える。これほど1つ1つの仕草を演技しているのは脱帽という他ない。よくぞここまでという感じだ。

ただアスペルガー症候群というよりは高機能自閉症に見えてしまうのは僕だけではないだろう。まあ本質的なことでは全然ないのだけど

主人公Khanが巻き込まれてゆく運命

Khanが巻き込まれていく様々な悲劇。それは彼が住むアメリカで怒った9.11の事件であったり、やっと結婚した家族内で生じる悲惨な事件であったりする。

そんな中でも1つのことにひたすら打ち込む彼に次第に状況が変化してゆく。

話の流れは少し名作「フォレストガンプ」を想像させるかもしれない。このようなひたむきさは時として、人々になんとも言えない安堵感と希望をもたらす。でもそれは場合によっては反社会的にもなりうる。その線引きはなんとも難しい。

khanが周囲に愛される理由

主人公khanは周囲の人々にとても愛されている。場違いな発言や行動をしても、それを周囲の人が許してくれ、時にはサポートしてくれ、時にはその言動に安堵さえしてくれる。

そんな周囲の人とKhanとの関係は、この種の障害の人々がどうやってこの世界で適応してゆくのか、1つのヒントにもなっているような気がするのだ。