FakePlasticTree

ひびのいろいろ

江戸は今の東京と似ているのではないか? 【書評】江戸の性の不祥事

いつでもどこでも変態の話というのは引き込まれる。いつの時代も庶民の話題をかっさらうのは人の不幸話、それも色恋沙汰。その話が江戸時代のことだとしても。そしてその時代の色恋沙汰を知ると何と江戸時代が身近になるのだろう、と感動することしきり。本書は江戸時代の性の不祥事について以下のような構成で書かれている本である。やっぱり日本人というのは性に寛容で、オープンな民族なんだろう。貞操概念などできたのは戦前の極めて短期間の出来事であって現代はむしろ江戸時代に近いのではないか?とそんな気さえしてきてしまう。

  • 第1章 将軍の筆おろし、好色な大名
  • 第2章 正室の嫉妬、大奥の淫行
  • 第3章 武士の離婚、妻の不貞
  • 第4章 不品行な文人、野放図な僧侶
  • 第5章 娘を売る親、奔放な若者
  • 第6章 遊里の男女、その悲喜劇

江戸時代の大名の性生活。バカ殿のような奔放な生活をしたかと思えばそうでもない。事実を知ると江戸時代の大名が哀れにさえ思えてくる。

大名の結婚はすべて政略結婚であり、正室は家格のつりあう大名や公家の娘だった。みな、いわゆる「深窓の令嬢」であり、ほとんど体を動かさない生活をしていたため体の発育や骨盤の成育が悪く、子供を産むなどほとんど望めない。そのため、町人や農民出身の健康な女とのあいだで子作りにはげんだ。Read more at location 495

 江戸時代を通じて、将軍や大名の正室が世子を生んだ例はまれである。ほとんどは側室とのあいだにできた男子が世子となった。徳川家にしても十五人の将軍がいたが、正室から生まれたのは三代家光と十五代慶喜のふたりだけである。Read more at location 499

江戸時代の同性愛の多さ(というか両刀使い)の逸話も引き込まれる。それだけこの時代には娯楽が少なかったということだろうけど。そしてその同性愛の犠牲(?)になった少年達の逸話もなんとも凄まじい。

陰間は少年のころに売られ、玄人に仕立てられた。重要な訓練に肛門の拡大がある。木製の張形を使って徐々に拡大していった。  その盛りは短く、せいぜい十六、七歳までといわれたが、美少年が好まれたからである。陰間の世界では関東者は雅に欠け、上方からの「下り」が高級とされた。そのため、関東出身者であっても「下り」や「新下り」と称して売り出すのが通例だった。Read more at location 1130

この時代のお伊勢参りが何故人気があったか? これもなんとも人間らしくて微笑ましい(?)エピソードだ。こんな点も現代の親父達と何ら変わりはないんだろうな、と感慨にふけってしまう。

江戸時代も中期以降になると庶民の生活水準が向上し、旅行ブームがおきた。  なかでも、伊勢神宮に参詣する伊勢参りは人々の夢だった。講を作って金を積み立て、団体旅行をした。信仰心はもちろんだが、なかば以上は行楽である。とくに男にとっては、行き帰りの宿場で女郎買いをするのが楽しみだった。伊勢神宮の門前には古市という遊廓があったほどである。Read more at location

江戸時代という過去の空想でしか思えないような世界が急に生き生きとして、生々しい世界に感じられるようなそんな書籍であった。

江戸の性の不祥事 (学研新書)
永井 義男
学習研究社 ( 2009-05 )
ISBN: 9784054041608