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ひびのいろいろ

【書評】骨を彩る

骨を彩る
彩瀬 まる
幻冬舎 ( 2013-11-27 )
ISBN: 9784344024908

「骨を彩る」は短編集だ。幾つかの物語が一冊の本の中にあって、それぞれの物語は登場人物が様々な形で繋がっている。そして一編一編がそれぞれの登場人物からの視点で描かれる。

ある時は妻をなくした不動産店舗の責任者であったり、その娘であったり、営業店舗の社員であったり色々だ。

それぞれの人達には表向きからは分からないその人なりの事情があって裏の顔や表情がある。その「彩り」を関わる人や場面や時代によっても変化してゆく。人間は単純でなく幾つもの層構造によって人格が作られてゆく。そんな存在なんだろう。

この短編集の大きな特徴はそれぞれの物語を彩る言葉のひとつひとつが美しく繊細であること。絹織物のような繊細で滑らかな言葉がきらこの本の中に詰まっている。前半は人の死に関連した物語が多い。

心の中にしっとり、すんなりと入ってくる言葉のひとつひとつが心地よい。そんな小説だった。

表紙の美しいイチョウの紅葉の絵は第一章と最終章を意識してのものだろう。自分も銀杏の黄金色のシャワーの中に入ってみたくなった。

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