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ひびのいろいろ

システマと認知行動療法

人はなぜ突然怒りだすのか? (イースト新書)
北川貴英
イースト・プレス ( 2013-12-08 )
ISBN: 9784781650197

システマはは武術の1つ。ロシアの武術で軍隊で採用されてもいるらしい。

システマ (格闘技) - Wikipedia

本書はそんな“システマ”から導き出される怒りのコントロール法について記された本だ。そしてその内容は僕が最近勉強している認知行動療法に驚く程に近いので驚いた。そもそも武術の達人というのは感情をコントロールできる力が備わっていることが多い。何故そうなのか今まで曖昧なことも多かったのだけど、本書を読んでその意味が分かったような気がする。

システマでは自分を見つめ直すために以下の4つをチェックすることを推奨している。その4つとは

「呼吸」「リラックス」「姿勢」「動き」

つまり自分の身体感覚に注目することで感情を制御し思考をコントロールする。身体感覚が怒りという感情に直接結びついているということをまず意識させるのだ。そしてその結果として、

自分の身体がどのような情報を発信し、他者の身体からどれだけの情報を受け取っているのか。それを知っていくことで他者への「未知」を少しづつ、減らしていくことができますそれによって未知が生み出す他者への恐怖心もまた、軽減させていくことができるのです (P.102)

これはそれがそのまま、認知行動療法の考え方に直結するものではないだろうか?

認知行動療法では ある“きっかけ”をトリガーとして ’‘感情”’‘思考’’ ’‘身体症状”’’行動”が有機体のように動き出し、それぞれが互いに影響を与えあう という理念に基づいた治療法である。その有機的な繋がりに着目しているという意味で共通点が多い。

それは以下の一文にも現れている。

怒りによって身体が緊張すれば、脳に酸素が満足に供給されなくなってしまいます。すると認識力や思考力が低下し、状況を正確に把握することも、相手の立場に立って考えることも困難となってしまうのです。(p.143)

認知行動療法とシステマ両者の差異

 認知行動療法では思考と行動の部分に若干の修正をくわえてゆくことで治療を勧めてゆく。しかしシステマではまず身体感覚を自らコントロールすることで他の部分もコントロール可能とする方法であろう。武道一般はこの概念に基づいたものが多い。かの有名な内田樹先生も同様のことを語っていたような気がする。

 認知行動療法がカバーしきれない部分をこの“システマ”が補完しているのかも? という意味で凄く面白い書籍であった。やっぱり幅広い分野の本を読むのは大事ですな。