【書評】山上敏子の行動療法カンファレンス
全くジャンルの異る書籍であるが、今回読んだ山上先生の本を読んだときに以下の書籍のある一文を思い出した。それは以下の一文だ。
むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことを真面目に書くこと (P164)
そんな一文を思い出したのは本書で語られる山上先生の言葉ひとつひとつが正にそんな感じだからだ。とにかく優しい言葉で分かり易くしかし臨床には真髄でいてしかも深い。
テクニカルタームだらけの文章や会話は高級そうに見え、敷居が高そうに見えるが内容はけっして深くないことが多い。それは特に初心者にありがちで、道を究めた人物ほどに逆の展開となる。わかりやすい言葉で語りかけれるということは、それだけその人の中身が露わになりやすいし、素の部分が出てくるのだろう。はったりが一切効かない世界となるのだ。
本書は症例検討会の内容をそのまま書き起こしたもので以下の章から構成される。
行動療法という言葉が書籍には記されているものの、それは行動療法の枠組みに因われることのない普遍的なもの。行動療法に偏見がある人がこの書籍を読めば、その見方が一気に変化するだろう。かくいう自分も以前は行動療法とは凄く四角四面で面白味のない治療法であると考えていた。
※ずっと長くやっていると、いろんな治療法というのは、結局は入り口なんだと思いますね。そこから結局は自分の治療法に成熟してゆく。 (P39)
同じ著者の別の書籍でこんなことを述べていたのを思い出す。道を究めるとその先には普遍的で共通の何かが存在するんだろう。
※臨床は自分の行ったことに自分で責任をとらなければならない仕事です。自分の中に返すしかありません。 (P255)
そしてそこまでの境地に達するためにはかなりの覚悟と努力と経験がいるに違いない。それはさらりと書かれている上記の言葉からもわかる。 将来この著者の領域に一歩でも近づけるように自分も努力を重ねていきたい。
*印は以下の書籍から