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ひびのいろいろ

人生フルーツ

ポレポレ東中野

自分にはお気に入りの映画館がある。総武線東中野駅の線路沿いにひっそりとある「ポレポレ東中野」という地下一階にある映画館。劇場は1つしかなくて客席は100席ちょっとぐらいだと思う。一階は喫茶店になっている。所謂メジャーな映画はやっていないけれど、良質のドキュメンタリー映画をいくつもこの映画館で見てきた。

ちょっと時間ができるとまずインターネットでここの映画館の上映情報をチェックして、映画を見に行くのが自分の休日の楽しみの1つとなっている。もっともそんな日は年に1-2回ぐらいだろう。ちょっと調べて見たらこの前この映画館に行ったのは2年前だった。

ゴールデンウィークはほとんど仕事で、家族もそれぞれ用事がある。ぽっかりと空いた1日があった。そんな日にこの映画館で映画を見た。午前中は凄い風と雨でうんざり、ちょっとの晴れ間に10kmほどランニングをしてリフレッシュしてから映画を見た。開始は17時だった。

楽しみにしていた映画は「人生フルーツ」。以前から好評の映画であり、今回はGWに的を絞った再上映だった。観に行きたかった映画だったがその機会を逃してしまっていたのだった。

人生フルーツ

映画『人生フルーツ』公式サイト

内容は僕の好きなドキュメンタリー。名古屋の郊外に暮らす老夫婦。年齢は80歳後半。名古屋市郊外の200坪ほどの土地に家庭菜園を作ってきた夫婦の物語。旦那さんは東大の建築学科から海軍(超エリート!)を経て、会社勤めをされてきた方。あの有名な阿佐ヶ谷住宅にもかかわっていたらしい。 そんな夫婦の生活は 全てに遊び心と創造性が発揮されていた。絵心満載の立て札や絵手紙。質素だが整理整頓されて綺麗で隙間の多い生活空間。高齢になっても地域から少し必要とされていて孤独ではない。そして当人たちは偉そうでもない。知的という言葉がぴったりくる生活。そんな生活の1つ1つがとてもオシャレで楽しそう。「豊か」ということはこういうことを言うのだろう。 夫婦中も程良い距離感でよい。

www.yoshitaka4729.com

そういえば、似たような内容の映画に「ふたりの桃源郷」というものもあった。この映画も感動的だったが、身に染みるという点においては「人生フルーツ」のほうが上かな。 これからの歳のとり方の1つの参考になるような映画であった。

4月に足が痙った

久々に足が痙った。朝方布団の中で微睡んでいたら右足のふくらはぎの筋肉がゆっくりとうねる感覚を感じた。とっさに「痙るかな?」と予想して右足を踏ん張り少し力を入れた。これはいつもの奴だ!と実感したからだ。ここ数日そんな嫌な予感がして足を踏ん張ることが重なっていた。そしてなんとかそれで乗り切っていた。全く科学的ではないがそうすることで足がつるのを防ぐことができていた

でもこの日は駄目だった。「手遅れ? 」一気に筋肉が収縮し激痛がでほとばしった。もうこうなったら為す術はない。ひたすら痛みに耐えるだけになってしまう。

とにかく痛かった。本当に勘弁してほしい。そう思った4月の朝だった。

iPhoneX

発売から3週間程してiPhoneXを手に入れた。シルバーの256GBのやつだ。

iPhone7と7Plusの丁度中間ぐらいの大きさ。片手で持てるギリギリの大きさが心地良い。しかも液晶が大画面で一覧性が高い。個体のサイズはXがベストなんじゃないか。片手でIMEを使えるギリギリの大きさだろう。でも女性だと厳しいかもしれない。

カバーはApple純正のフォリオ型のものにした。2-3枚のクレジットカードやジムの会員証が入る。これも使い勝手がよい。革の質感も素晴らしい。徐々に手にも馴染んできて、弄くっているだけで心地良い。

個人的に一番感動したのは無線充電。デスクワークが多く、時々移動があるので無線充電はありがたい。ケーブルを操作する時間なく「さっ」と移動できる。無線充電も色々売られていて値段もまぁこなれていたので複数台購入した。一番のお気に入りはAnkerの充電器。コンパクトで鞄の中にも「すっ」と入る。

困ったのはSUICA。通勤電車やバス、日々の買い物に大活躍しているSUICA。これの使い勝手が至極悪い。iPhone7の時は何も考えず支払うことができたのにXでは2ステップ必要になる。まずサイドボタンをダブルクリック。そして顔認証だ。この2ステップが凄くストレスフル。指紋認証では全然苦にならなかった。まあ馴れていけばちょっとは変わっていくかな??。できればソフトウェアのアップデートで対応してくれないかな? とグチグチ考えていたら、自分が設定方法を知らないだけだった。

moshbox.jp

設定からエクスプレスカードとして設定すれば良いだけであった。これで大きな不満の一つが解決した。媒体の構造上画面のスクリーンショットを誤って撮影してしまうことが多くなった。これは個体になれていけば徐々に減らせるのかな。そうなると良いけれどどうだろう。

全体的な使い心地はとても良く今のところ非常に満足しているiPhoneXであった。

風葬

小説を読む意義は?

実用書でなくて、文学小説を読む意義とは何だろう。文学小説は圧倒的に時間を浪費する。他の趣味に比較して時間対効果は圧倒的に低い。小説を読むよりも、同じストーリーを映画やアニメ、漫画ですましたほうがよっぽど時間を節約できる。しかし同じ物語であれば、できれば僕は小説を読みたい。そう思う。そして人生が忙しくて、やってられない、どうにも疲れた時にこそ読みたい。読んでその世界に浸りたい。そうやって読むことで心を癒やせる。

ちょっと疲れた時に読みたい作家は大抵決まっている。それは桜木紫乃の作品だ。 今までも何度も氏の作品は読んだ。混み合う電車の中でしんみりと涙を流してしまった作品もある。中年の男が電車の中で涙しながら本を読む姿というのはちょっと気持ち悪い。大抵において氏の作品は大号泣するタイプの作品はない。しんみりと心の中でじわじわと哀しみが染み渡る作品が多い。それがまた良い。そんな感情が自分の中にまだあったのかな、と知る感覚は何ともうれしい。そういう感覚を通り抜けると、心がリフレッシュされる。

氏の大傑作に値する作品は個人的には「ラブレス」と「星々たち」という北海道の哀しい女性を描いた作品だ。どちらも一気に読んだ。

そして今回の「風葬」だ。氏の作品にしては凡作といって良いのかもしれない。それでも充分に面白かった。やっぱり舞台は道東。北海道の不幸な人々たちが登場人物となる。内容はサスペンスドラマのような内容であった。火曜サスペンス劇場(まだあるのかな?)とかの格好の原作になりそうだ。

ストーリーはそんなに目新しいところはないが、文体がしっとりとしていてもの悲しく、道東の風景が目の前にぼんやりと浮かぶような感覚を味わえた。通勤電車の中で1-2日で読み終えることができた。帰りの「ぐたっ」といた自分の脳みそを癒やしてくれるようなそんな作品だった。

缶ビール

仕事の一通りの区切りがついたのは21時頃。こんな生活をしていたら体がもたないよなぁと呟きながら帰る。自転車で5kmほど職場から走る予定であったが、とてもそんな気力がわかず結局バスを使うことにした。夜の寒さがすっかりやる気を吹き飛ばした。今日も運動できなかった。バスを降りて最寄りの駅でスーパードライの500mlを購入する。サラミも一緒に買った。サラミをかじりながら1番線のホームでビールを流し込む。端から見たら寂しい中年男だが、この時間が一番心が休まる。1人で居酒屋に行くと金がかかるし、滞在する時間もちょっともったいない。

乗り込んだ電車は、ほどんどの客と反対方向なので空いている。端の席が6割型空いているのでかなりの空き具合だ。いつもの端の席に座った。今日の出来事を思い出しながら電車のここち良い揺れにウトウトしていたら知らぬ間に自宅近くの駅に到着した。あっという間だ。なんだか時間を少し損した気分になった。

自宅で家族はもう全員寝ている。しかし1階の電気を付けっぱなしにしてくれているのであまり寂しくはない。この家に誰かが居てくれる。それだけで心は落ち着くものだ。 家についたら2本目のビールを空けよう。そう心に決めていてので直ぐに冷蔵庫へと向かう。ビールをもってダイニングテーブルの端の席に座った時にiPhone7の着信が鳴った。iPhoneで電話を受けることなんて仕事場からの緊急の電話だけといって良いので妙な胸騒ぎがした。またか・・・と思った。

しかし予想に反して電話の主は大学時代の親友であった。そいつはかなり出来る奴だった。というか努力家だった。試験前には眠気と闘うために手の甲に鉛筆を指しながら勉強をしていた。そのため手の甲が真っ黒になっていた。2晩くらいの徹夜なんかどうってことのない奴だった。要領はよくなくて不注意だったけれど、優しくて不器用な奴だった。仕事を初めてからは数えるぐらいしか合っていないが、人生の節目では大事な話をしていたと思う。

要件は「国立大学の教授になるかもしれない」という話だった。まだ全然本決まりの話ではないが、そういうことだった。まず最初に俺に電話をしてきてくれたのが何よりも嬉しかった。同業界の中では必ずしも有利な立場にあるとは言えない大学出身者が国立大学の教授になるというのはかなりの出来事だ。思わず胸が高まった。親友の声が若干上ずっているのが分かった。そして早口であった。

これが10年前なら自分は相当悔しがっていただろう。20年前なら嫉妬で卒倒していたこもしれない。しかし今回は素直に友人の出世(するかもしれない話)を喜ぶことができた。自分がそんな気持ちになれたのがなんとも嬉しかった。この日のように電車のホームで缶ビールを俺が飲んでいる間にも、きっとあいつは歯を食いしばって論文を書いていたのだろう。凄いやつだ。

そして 俺は何をこれからするんだろう? と思うとちょっと切なくもなった。まあ、真面目にやろう。そう思いながら350mlの缶ビールを飲み干した