【書評】遊戯療法と箱庭療法をめぐって
『自分の仕事に対して誠実になる』ということは本当に難しい。
この書籍は本当に自分の仕事に真髄に向き合って、それこそ血と肉から紡ぎ出されたといってもよい内容のものだ。誠実な本だと思う。
本書は遊戯療法について書かれたもの。認知行動療法が主流の現在にあってやや時代に取り残された感もある印象がある。
しかし小さい子ども 特に就学前から小学校低学年を対象とした精神療法として意味のある治療効果の高い手法だと思う。莫大な手間と時間的空間的なコストがかかるのが欠点。そして医療経済的にみても不経済というか採算がとれない。そんな理由から一般の医療機関でやるには相当の覚悟かいるし、そもそもお金のことなど考えてこの治療を選択することなどない。
この遊戯療法のなにが素晴らしいかといえばそれは以下のようなところ。
遊びのなかで子どもが表現し体験することは、子どもが単に”何かのつもり”になっている状態をはるかに超えてしまう。子どもは、その”何かそのもの”を表現し、体験しているのである (P4)
このような体験を治療者が一緒に体験出来るのがたまらない。そして子ども自身の自然治癒力に本当に驚かされ、ワクワクした気持ちになれる。それがなんと言っても素晴らしい。
本書を読んでもそんなワクワクした気持ちを体験することができる。
時代に合わせて変化してゆくことも必要なのだろうけど、しかしこんな治療や治療者にもっと日の目が当り経済的なバックアップもつくようになればよいのになと心底考えてしまう。