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ひびのいろいろ

【書評】自己愛人間

自己愛人間 (ちくま学芸文庫)
小此木 啓吾
筑摩書房 ( 1992-09 )
ISBN: 9784480080165

この書籍が書かれた時代は昭和。もう随分と前の話だ。しかしながらその内容はぴたりと現代を予言している点において慧眼に値する。しかもその言葉は優しく(易しい)内容は奥深い。本書を読み進めると、その内容が自分に当てはまることご多すぎて、ちょっと読み進めるのが辛くなってしまうのも特徴だろう。

主題は「自己愛」。人間が生きていくのに必要な部分ではあるがそれは絶えず肥大し続けるような自分の中のモンスターのような存在。幾多数多の宗教家が克服しようとした課題もここら辺にあるんだろう。仏教でいう煩悩とは自己愛に近いものなのじゃないか。

自己愛に取り憑かれ呑み込まれる恐怖に自分自身も怯えているのも事実。自分はなんていう怪物(モンスター)なんだろうと自己嫌悪に陥ってしまう。

恐らく「俺には自己愛で困ることはない!」と断言できてしまう人格の持ち主こそ病的なのである。自己の自己愛的な部分とどうつきあうか? 自己モニタリングしながら自分の周囲にないが起きているのか?を客観的に判断してこその僕らの職業なんだろう。

若い時にはまだ色々なことが勢いでできていた部分もあった。

しかし歳をとるとさまざまなことに気がつかなくなってゆく。 昔の光景を懐かしがって、その方法に執着したり若い年少者の文句を言ってしまうのも加齢性自己愛ともいうべきものかもしれないな。

自分で自分のことをどれだけ制御できるか分からないけれどそれでも自分自信を制御できるような歳のとりかたをしたい