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ひびのいろいろ

【書評】日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11

もし自分が日本の現代史の書籍を誰かに薦めるとしたらこの本を選ぶだろう。それだけ素晴らしい本であった。 作者は英国のフィナンシャル・タイムズの記者で数年程日本に滞在した人物。

この書籍の何が凄いかと言って,その圧倒的なインタビューと取材の量であろう。 インタビューの対象者がまず幅広い。被災地の一般市民から元総理大臣の中曽根総理、イラク邦人人質事件の今井氏,果ては村上春樹までここには書き切れないぐらい程。そして参照文献(資料)の数も幅広い。

こんな莫大な資料の中から紡ぎ出される日本の近代〜現代史は圧倒的な情報量かつその内容もまとまっている。こんな一般向けの書籍が日本人以外の人の手によって書かれたのが何とも日本人として悔しい気持ちにさえなってしまう。

しかし若干内容がいかにも欧米人目線なところが個人的には気になるところもあった。 ドイツと比較した日本人の態度(戦争責任に対して)

日本はこれまでブラントの「ひざまずき」に匹敵する意思表示を行なったことがない。

こういう文言などは思わず「あなたたちに言われたくない」と考えてしまうのは自分の精神が貧しいからなのだろうか。ともかくイギリスとアメリカは日本のことをとやかく言う資格はあるんだろうか?と個人的に感情的になってしまうのだ。

まあそういう所はあるけれど素晴らしくまとまった優れた日本の現代史の書籍であることは間違いない。