子どもの自殺/自傷についての本を読んだ
自殺というものは単一の原因としてではなく、生物学的要因、性格傾向、ストレッサー、精神疾患および家族背景などが様々に影響しあって起こるものであると考えられている。有名な厚生労働省の死因に関する資料。10代前半から自殺が死因の原因として現れ始め、15歳から30歳台までは死因のトップとなってしまう。
日本では中学/高校教師の5人に1人は生徒の自殺に、3人に1人は自殺未遂に遭遇しているという現状があるという(上地安昭:教師のための学校危機対応実践マニュアル.金子書房、2003)。少し古い資料だけど現在でもその総数はそんなに変化はないのであろう。
ちょっと文章で書いていても気が滅入りがちになる問題。その問題についての第一人者が書いた一般向けの書籍が今回読んだ以下の本。
本書は、子どもや思春期の若者たちの自傷を中心にとりあげながら、子どもと若者の自殺予防のために周囲の大人たちは何を考え、何をすべきかについて、私自身が臨床経験や研究を通じて考えてきたことをまとめたものです。
と前書きに書いてある通り、自傷を中心的な話題として非常に分かり易くその特徴を述べながら具体的な対応方法などについてもまとめた書籍だ。
自殺とは「苦痛しか存在しない世界からの脱出」であり、自傷とは「苦痛に満ちた世界に堪え忍ぶこと」であると考えてよいでしょう (P21)
と自殺と自傷との区別をしながら
自傷とは、「その瞬間を生き延びるために」くりかえされながら、最終的には、逆説的に死をたぐり寄せてしまう行為なのです。その意味では、アディクションとしての自傷は、本質的に「死への迂回路」であるということもできます (P62)
自傷から自殺至る経緯や危険因子についても非常に簡潔かつ分かり易く述べている。一般向けの書籍と思われるのに参考文献もきちんとついている所が素晴らしい。この種の書籍の中では一番の物なのではなかろうか。
おまけ
思春期から青年期の自殺と密接に関係のある「群発自殺」について勉強するとしたら、 以下が自分にとっては分かり易かった。