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ひびのいろいろ

【書評】母さんがどんなに僕を嫌いでも

母さんがどんなに僕を嫌いでも
歌川たいじ
エンターブレイン ( 2013-02-28 )
ISBN: 9784047285286

題名だけでもかなり切ないが内容はもっとせつない。町工場を経営する両親のもとで生まれ、両親から虐待を受け育った作者の半生記。

しかし、本書はそんな環境への恨み節を描いたものではない。

作者が話す命を繋いでくれた人たちへの感謝の本という言い方が よく当てはまる。そんな本だ。そういう気持ちに到達できたのは結局少年期から作者を支えてくれた様々な人々がいたからだろう。特に町工場の従業員との関わりは本書の中で特筆して心温まる部分だ。その従業員のおばあちゃんとの別れ、おばあちゃんの台詞(「僕はブタじゃないと云って」)は思わず目頭が熱くなる。

その他の内容は以下のYoutube上にアップされているPVを見れば大体分かると思う。

これで少しでも興味をもったら是非購入して読んで見てみて欲しい。書籍を読むと、不思議と自分も頑張らなくちゃな。という気分になってくる。何かを表現してゆくことで、昇華(消化)されてゆく部分てあるのだろう。過去にトラウマをもつ人々がこうやって何かを表現することで乗り越えてゆくことは少なくない。著者も漫画だけでなく、演劇や歌などちょっとWebを検索しただけで様々な表現活動をしている。それは作者にとって絶対い必要なことなんだろう。

作者が呟く

「母から逃げることができても記憶からは逃げられないのだから。傷がぜんぶ誇りに変わるような新しい記憶をつくるしかないのだ」

という言葉は決意表明でもあるんだろう。これからも生き抜いてほしい。