FakePlasticTree

ひびのいろいろ

芸人バー

 

毎日降りる西東京の駅。いつも駅を降り立つのは22時過ぎ。ここ数年大きな変化があったその駅の北口はサラリーマンでごったがえしている。大きな変化とはいくつかの会社と大学が再開発で引っ越してきたのだ。だから随分と人が多くなった。めまいがするほどの人混み。僕はこの街と会社の間を10年以上行き来している。小学生の時も含めると20年以上になるだろうか。この数年で随分と風景が変わった。時代が変わった。

 だからいつもと同じ風景、人の顔を見ると安心かつ安堵する。そんな人物の一人がこの駅にいる。北口の改札口を出ると決まって、飲み屋の呼び込みの人が立っている。30代後半とおぼしきその女性は「芸人バー」という立て看板を首から提げている。もうすぐ夏だというのに少し厚手の服。温暖の感覚がないのかな?と疑ってしまう。

 芸人バーという名前は明るい雰囲気を予想させるが、その看板を首から下げた女性は恐ろしくつまらなそうだ。はっきり言ってやる気が毛頭感じられないと言ってよい。この世のつまらなさをすべて一心に受け入れたかのような表情をしている。呼び込みにも全くやる気が見られない。表情は変わらない。

 でも変わらず愚直にまじめに生きている(と思われる)。あんなにつまらなそうなのに、仕事をしている。それが生きるということなのかもな。そうして僕も生き延びる勇気をもらっているのかもしれないな。とふと考えた。