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ひびのいろいろ

椿山課長の七日間

浅田次郎といえば「鉄道員」。というか僕はそれしか読んでないのだけど。この珠玉の短篇集の中でも“角筈にて"という物語は格別であった。子どもの一途な想い、二度と帰ってこない過去、父親の切なさ、人間のやるせなさ。全てが詰まった作品だった。少ししんみりしたい気分になりたい人には僕はこの小説をお勧めするだろう。

超有名な作家なのでほとんどの人が知っているだろうが次に自分が読んだのがこの「椿山課長の7日間」西田敏行伊東美咲らが主演で映画化もされている。

物語自体は死者の「黄泉がえり」のような何処かで聞いたようなもの。しかしその人物描写や心的情景の描写が素晴らしい。くたびれた40−50代の中年の男子を描くのがこの著者は圧倒的に上手い。狡いくらいに上手いのだ。個人的には「角筈にて」には及ばない部分もあったのだけどそれでも映画化される作品というだけはある。たまにこういう上質の小説を読んでしっとりとするのもいいもんだ。