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ひびのいろいろ

【書評】言の葉の庭

小説 言の葉の庭 (ダ・ヴィンチブックス)
新海 誠
KADOKAWA/メディアファクトリー ( 2014-04-11 )
ISBN: 9784040663999

 なんか表紙だけで良い感じの本というのは確かにある。本屋に平積みされた姿がどことなく魅力的で目を引く本。そしてそういう本は大抵当たりのことが多い。この本もそうであった。まるでフランス映画のような小説。各章の最初には万葉集の和歌がひとつづつ添えられる。それを読むだけで、頭の中に景色が広がって、章ごとに物語に引き込まれてゆく。新緑の公園の雨の色と匂いが似合うそんな物語。

元々はアニメ映画が原作。映画は見たことはないけれど、その映像はたまらなく美しい。雨の日ごとに公園で逢う男子高校生と20代の美しい女性。会うではなくて’‘逢う’’というのがポイント。それだけで、なんだかちょっと妖艶でエロティックな感じ。そんな描写は一切ないのだが、雰囲気だけでそう感じさせる小説はそうはない。

章ごとにそれぞれの登場人物からの視点で物語が展開してゆく。最近自分が読む小説にはこういうパターンのものが多いかもしれない。昨日読んだ「沈黙の町」もそうだった。

あんたは一生そうやって、自分は関係ないって顔して、ずっと1人で生きていくんだ」 (P315)

という言葉が何とも素直に自分の中に突き刺さる。

400ページ近くある小説なのだけど、読みやすく一気に1–2日で読めてしまうものなので夏休みとかに読むのがお勧め

しかし、こんな小説を40過ぎて読み、しかもちょっと感動するなんて思ってもみなかったな。