FakePlasticTree

ひびのいろいろ

【書評】秋葉原事件

 秋葉原連続殺傷事件が起きたのは2008年。もうすでに六年ばかりの時間が経過したことになる。随分最近のように感じていたけれすでに6年程の時間が経過しているのか。秋葉原は普段通勤圏で、たまに利用している場所であり、中学生の頃はマイコン(古い)触りたい気持ちに突き動かされ、通った場所でもある。そんな場所で起きた凄惨な事件。

 

この秋葉原連続殺傷事件の犯人、加藤智大について幼少期から事件を起こす所までを追ったノンフィクションが本書である。

 

子どもたちの頃から継続的に母からの心理/身体的虐待、衝動的に起きる自殺衝動、第三者を苛つかせるほどの承認欲求。この犯人は人との繋がりを常に求めている。それもちょっとウザッタイ程に。

 

しかし他人との関係が近くなり、親しくなった所で彼の対人関係のパターンが露出する。そこで少しでもトラブルが生じると自ら何の迷いもなく、そして言葉もなく関係性を切ってしまうのだ。

 

本書の最初には

言いたいことや伝えたいことをうまく表現することができなかった。言葉でなく、行動で示して周りにわかってもらおうという考え方でした (P17)

 

という犯人の言葉で始まり、その行動パターンは変化しない。

 

そして

人間は言葉の動物だ。人は言葉の産物として生きている。個人としても、集団としても。 (P259)

 

 という言葉で締めくくられる。

言葉が人を変え、言葉で治療される。そんな可能性が事件を起こす前にこの犯人にあったらと考えてしまう。

 

とにかく憂鬱になる本であった。