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ひびのいろいろ

【書評】陽の当たる家

貧困はある日突然訪れる。どんな家庭の状況であってもどんなに資産があっても、可能性の差こそあれ、それがいつ訪れるものなのかは誰にも分からない。

本書は生活保護について極めて分かり易く描いた漫画。普通の幸せをしていた家族が、父親の病気をきっかけとして貧困に陥ってゆく。そこから生活保護を家族が受けて、生活を立て直してゆくというストーリー。

生活保護の受給申請で役所の人に冷たくあしらわれたり、無事生活保護を受給できるようになってからも近所の人々や学校のPTAの人々からも蔑みの視線や言葉を投げかけられたり苦労は続く。 ちょっと誇張気味にその姿は描かれていて、すこし嫌な気持ちになってしまうところもあるかも知れない。しかし地域によってはこれも現実の一部分なんだろう。

最低限度の文化的生活を送るのは明文化された国民の権利なのだから、堂々とその権利を主張して受給するのは立派な当然のことなのだ。そしてこの漫画の主人公達はそんな扱いを受けながらも、周囲の人々の助けを得ながら、生活を立て直す。

一言で生活保護と云っても、その正確な正体を分からない人がほとんどであると思う。それを分かり易い形で漫画という媒体で広く分かって貰うのは非常に意味のあることだろう。こんな漫画が公共機関や役所や図書館に何気なく置かれるようになっていれば素晴らしい。

そして貧困は次世代にも残念ながら連鎖してしまう。現時点の生活を立て直したら、未来に目を向けなくてはいけない。この未来に目を向けられなくなってしまうのが貧困の恐ろしいところでもあるのだろう。

それを防ぐためには教育。以下の書籍でも述べられているように高等教育がその鍵なんだろう。現代の状況、就職に合わせた柔軟な高等教育、脱落者を最小限に抑えるその体制作りをどう作るか?色々課題は多いのだろうけれど、僕もそんな状況を少しでも変えられるように自分の仕事を頑張っていかないいけないかな。