FakePlasticTree

ひびのいろいろ

桜の木の下

 今年の桜はいつもより、綺麗だった。開花が遅かったことも影響しているのかもしれない。昨日から今日の雨でおそらくほとんど散ってしまうのだろうけど。昨日は良い天気だった。陽の光の中を桜の花びらがかいくぐって散っていく様はそれはそれは美しい。花が散る時の美しさ、桜が際立っている。そして散る時に美しさを見出すのは凄く日本的なことなんだろう。

 桜は日本にとって特別な存在、その美しさの裏には『狂気』『切なさ』など、美しさ以外の様々な意味が含まれているからだ。

 

坂口安吾 桜の森の満開の下h"はてなブックマーク

大昔は桜の花の下は怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いませんでした。

近頃は桜の花の下といえば人間がより集って酒をのんで喧嘩していますから陽気でにぎやかだと思いこんでいますが、桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて狂い死して花びらに埋まってしまう(このところ小生の蛇足だそく)という話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。

梶井基次郎:桜の樹の下にはh"はてなブックマーク

俺にはその美しさがににか信じられないものやうな気がした。俺は反対に不安になり、憂鬱になり、空虚な気持ちになった。

  久しぶりに『坂口安吾』や『梶井基次郎』の短編を読んでみた。やはり味わい深い。あまりにも美しいものを見るとその裏にある「なにか」が強く気になってしまうのは人間の性なのかしら。