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ひびのいろいろ

【書評】逆風に立つ 松井秀喜の美しい生き方

伊集院静氏が松井秀喜のことが大好きなのは以前から知っていた。大好きというレベルではなくそれこそ惚れていると言って良いレベルなんだろう。彼のエッセイを何かひとつでも読めば直ぐにそのことは了承できる。

そんな伊集院静氏の松井秀喜に対してのエッセイ。人が人に惚れ込むというのはこういうことなんだろう。それにしても60を過ぎた大人を惹きつける松井秀喜という人物は相当のものだ。確かにホームランを打ち、グランドを一周する彼の姿は何処か威厳があって神々しいものを感ずる。武士というものが今の日本にいたとしたら、こういう人のことを言うのだろうなと思う。そして松井秀喜に関してはその人物評で悪い噂を聞いたことがない。それは大リーグに行ってからも同様でやっぱり彼は絶賛されていた。

その理由が本書を読むとなんとなくわかる。1つ1つの松井のエピソードに驚き、感心する。そして穏やかに、何の疑いもなく1人の選手を応援する夫婦の姿も何とも美しく感じる。 その結果自分自身が何と小さく卑屈な人間なんだろう、とちょっと落ち込んでしまうだろう。少なくとも自分はそうであった。

批評ではなく、批判でもなく唯々その人物を応援し尊敬する文章とは美しいなあとも考えた。そんな書籍であった。