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ひびのいろいろ

傑物

神田橋條治の精神科診察室

神田橋條治の精神科診察室

どの世界にもその世界感が抜きん出てジャンルを超え神の領域(?)までいってしまう人というのがいる。 自分が所属する業界の中では神田橋先生がその代表的な人物だろう。その世界感は医学を超えて様々な人を惹き付ける。

精神医学は医学ではなく、この方の場合にはアートなのではないかとも思えてくるほどに他の医師には追従を許さない世界だ。 もはや、自分のような小さい人物には到底理解できない領域で、数ある著作を読んでも感嘆はするのみであるというのが現実のところ。

それでも自分の臨床に役立ちその幅を広げることができないか?と考えて本書を読んだ。本書は対談形式で書かれているのでとても分かり易く、架空症例を元にして論が進むのでその点でもイメージが頭の中で膨らみやすい。

中でも愛着障害(本書では「愛着の障害」としている)についての記載はとても腑に落ちた。 それはつまり以下の一文だ。

愛着障害というのはいかなる形で提供される愛情も、本人が、素直な形で受け取ることができない点にあるんです。

この一文に出会えただけで自分のシルバーウィークは価値があった。ちょっと大げさかもしれないがでもそんな気分になれた9月下旬だった。