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ひびのいろいろ

【書評】精神科医療のノンフィクション_心に狂いが生じるとき〜精神科医の症例報告

著者の岩波明氏は精神科医。

岩波明 - Wikipedia

以下の9章からなる症例報告で精神科医療、精神疾患を患っている人々の姿を描く書籍である。

第1章 依存の果て 第2章 架空の敵 第3章 罪なき殺人者 第4章 摂食障害というゲーム 第5章 無垢な逸脱 第6章 器質性精神病 第7章 精神鑑定の嘘 第8章 うつ病の不都合な真実 第9章 アナンカスト

一般の人々にとって、まず思い浮かぶ精神疾患といえば”うつ病”であろう。本書にも第8章で取り上げられているが、それはほんの一部であり、多種多様な人々の姿が本書では描かれている。そして現在の精神医療の問題点についても触れられている。

それぞれの物語が極具体的に症例を元に描かれているので内容がリアルで、頭の中に入ってきやすい。同じ現場で働く者として、極めて現実の姿に近い人々の人生が本書には記されている。

精神疾患と自分が全く無縁だと考えている人も、本書を読めば何時自分が罹患してもおかしくない極めて身近なものであることに気づくだろう。そして精神疾患に対しての偏見もなくなるだろう。専門書でなく一般の人々向けの書籍で本書のようなものは存在しなかった。そういう意味で非常に価値のある書籍であると思う。